皆さん、こんにちは。
きさいや広場セレクトスタッフの花田です!
宇和島市のきさいや広場から西に車で約40分、三浦半島の先端に位置する蒋渕(こもぶち)地区をご存知でしょうか。
山地がそのまま宇和海に突き出したようなリアス式海岸の地形を生かし、真鯛や真珠、岩ガキの生産が盛んな地域です。
今回はそんな蒋渕地区で養殖真鯛の加工品などを製造されている「こもねっと」の高木さんにお話をお聞きしました。
真鯛の魅力を余すことなく活かし切った「あら炊きスープ」の商品開発秘話をご紹介します。
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原点は「養殖真鯛のおいしさを出し切る」ということ
こもねっとさんの商品の主軸は真鯛の一夜干しです。
「あら炊きスープ」は、この一夜干しの加工で出る魚のあらを使ったスープです。
蒋渕出身の高木さんは、当初は漁協職員としてこもねっとでの商品開発を開始しました。
養殖真鯛は脂の乗った濃厚な味わいが魅力ですが、その分、天日干しをするとすぐに色が悪くなってしまうなど一筋縄ではいきません。
試行錯誤を重ねた末に、低温乾燥ができる特別な機械を導入し、時間をかけてじっくりと加工することにしました。「養殖のおいしさを生かせるようにしないといけない」という高木さんの言葉の通り、加工方法に徹底的にこだわったからこそ、養殖真鯛の魅力を生かしたこもねっとさんの土台がしっかり作れたといいます。
そんな主力の一夜干しを生産する中で、魚を三枚におろしたときに出る中骨などのあらを捨てているのがもったいないという想いが高木さんにはありました。
近年、様々な代替食品が開発されていますが、「まずは今食べているもので捨てているものがたくさんある。それを活用するのが先ではないか?」と感じ、何か作れないかと思ったのがあら炊きスープ開発のきっかけでした。
まず7年ほど前に、真鯛のあらをペースト状にする技術を開発しました。骨も含めてやわらかくし、まるごと食べられるようにする方法です。初期はドレッシングやしょうゆ、ベシャメルソースを開発しましたが、販路や知識が足りず、なかなか軌道に乗らなかったとのこと。
しばらく開発を止めていましたが、2年ほど前にたまたま新たな製法の着想を得ました。それは「やわらかくして食べる」というだけではなく、「うまみ成分も抽出し、出汁を取る」という活用法でした。
というのも、中骨を圧力なべで柔らかくする際にでるときにでる煮汁は捨ててしまっており、それは真鯛の魅力を結局捨ててしまっているのでは、ということに気づいたのです。
実際に中骨のペーストを作る過程で出汁を取ってみて、これを使ってスープを作ることにしました。
始まったのは出汁取り修行
スープを作るにあたり、高木さんがちょうど特産品フェアで出会った松山の料理学校の先生に相談をして、レシピ作りを依頼しました。しかし、レシピはなかなか届かず、先生のいる松山に何度も足を運ぶことに。
しかも、松山にレシピをもらいに行っているのに、毎回なぜか出汁の取り方を徹底的に指導されたと高木さんは笑いながら話します。
「出汁をとるまえに湯通しして、アクを取れ」、「そのあと酒をいれて臭みをとれ。酒はもちろん無添加のもの。」など、細かい指示が飛びます。
何度も通い詰めた末に、やっと出汁の取り方が確立しました。明らかに以前より味が洗練され、無駄な臭みのない、とても美味しい出汁ができたと高木さんは思ったそうです。
そして「この出汁ならどんな配合でもいいスープができるよ」という先生の言葉を聞いて、はじめて一夜干しと同様に、あら炊きスープでもすべての土台となるいい出汁が必要だということがわかったとのこと。
うまくいかない商品開発の過程で、完成品ばかりに目を向けてしまっていたことに気づき、真鯛のいい素材を生かすには、まずは徹底した土台が必要だと再認識したといいます。
右が中骨のペーストで左が出汁を凍らせたもの。スープの核となる2つです
真鯛の上品なイメージを覆す「やんちゃなスープを作りたかった」と高木さん。
うまみの三大要素の一角、イノシン酸を養殖真鯛の出汁が押さえ、しいたけ(グアニル酸)、こんぶ(グルタミン酸)の3つの要素が絶妙なバランスで配合された味のインパクトは、他にはない味わいです。
しいたけも入っており、真鯛のうまみをさらに引き出しています
届けたい人を徹底的に考えて作ったパッケージ
女性や若い人にも手に取ってもらいたいという想いから、パッケージにもこだわりました。
パッケージデザインは愛媛を中心に地域創生ライブコマーサーとして活躍する高岡奈々葉さんに依頼しました。高岡さんはSDGsに関連した取り組みも発信しており、捨てることなく残さず味わうという商品のコンセプトにもとても共感してもらえたそうです。
改良に改良を重ね、思わず手に取りたくなるようなすてきなパッケージができあがりました。
実は、きさいや広場だけでなく、ANAさんの空港ギフトショップ「ANA FESTA」でも取り扱われており、どちらも「これはいけますね」と即決で置いてもらえたそうです。
さまざまな人に生産からマーケティングまで力を借りながら進めていったからこそ、多くの人に受け入れてもらえる商品を作れたのではないかと、感慨深い面持ちで高木さんは話されていました。
あら炊きスープをきっかけにさらなる飛躍を目指す
当初は売れるか不安だったものの、あら炊きスープは初年度でなんと計画値の5倍の売上を達成しました。
今後は、ペーストと出汁を原材料としてペットフードやかまぼこ、じゃこ天、ラーメンなど他社とのコラボレーションの可能性を積極的に広げていきたいとのこと。
また出汁取りは一夜干しよりも技術習得のハードルが低いため、地域の雇用拡大にも一役買えるのではと高木さんは期待しています。高齢者の方など、できる範囲でより自由な働き方を必要とする人たちのために、柔軟に対応できる就業機会を作ろうと考えています。
宇和島の自然とともに、さまざまな縁に恵まれながら生まれた「あら炊きスープ」。
ぜひ一度、蒋渕発の養殖真鯛の楽しみ方をお試しください!
養殖真鯛を味わい尽くせ!こもねっとさんの「あら炊きスープ」